ヒトミエーアイの人工知能による「参考銘柄抽出サービス」とは
Hitomi AI(ヒトミエーアイ)は、いわゆる「参考銘柄抽出サービス」を提供している。 このサービスでは、人工知能が株価を左右する多数の情報を収集し、 その分析結果をふまえて、有望な銘柄を選定するようだ。 「お宝」的な銘柄を発掘することを目指している、ということだろう。 一種の宝くじみたいなものか。
情報を収集・解析
具体的には、例えば以下の市場データや金融情報が、Hitomi AIの人工知能によって集約されてると、私は想定する。
- 他社との資本・業務提携の発表
- 合併や買収の発表。TOBやMBOによる株式公開買付けの発表
- 企業にとって大きな影響が生じると想定される事象の発生
以上の情報は、株価の急上昇の材料になる場合が多い。ヒトミのシステムは、こうした材料や兆候を見逃さないように、アラート発信の道具として設計されているということだ。

ビッグデータを活用
Hitomi AIは、ビッグデータ活用型の人工知能だとされる。
近年のAI開発競争においては、アメリカの企業及び研究機関が世界最先端を走っていることは衆目の一致するところだ。具体的には、オープンAI社のチャットGPT(ChatGPT)やGoogle(グーグル)の「Bard(バード)」だ。彼らは、人間の知的労働を代替するAIにとどまらず、人間と同等の知能を持つAIの研究を始めている。とはいえ、Googleの場合、実際に収益を生んでいるのは、彼らの本業である「ネット検索広告」の分野だ。AIでは利益を稼いでいない。
評価
一方、Hitomi AIのような日本のAIの新しい旗手たちは、オープンAIやGoogleと真っ向から勝負するのでなく、AIを「リアルなモノ&人」の世界に適用することを優先させている。私が取材したところでは、Hitomi AIのサービスは「詳細は不明だが、予想の的中率が高くなっていけば、実用性は高いかも知れない」との評価が妥当な線だと考える。GoogleのAI開発に置き換えていうと、Hitomi AIは「Google(グーグル)アナリティクス」という位置づけではないか。Googleアナリティクスとは、検索エンジンが集めるビッグデータをAIで解析することでネット広告を最適化し、最大の効果を狙う分析手法だ。ユーザーの「実用性」に重点が置かれている。
本質と株価の乖離
また、私の経験を加味すると、Hitomi AIのシステムは「投資家の相場観の最適化」を目指しているように思われる。例えば、株式相場に足を踏み入れた個人投資家が、個々の銘柄のバリュー(本質的な価値)と実勢価格(株価)の乖離(かいり)に気づけるような、情報提供の仕組みづくりだ。
新世代のAIベンチャー
いずれにせよ、Hitomi AIのような新世代のAIベンチャー技術は、学術的なAI研究よりも、「リアルなモノ・人」の行動が生み出すビッグデータから、大きな価値を生み出そうとしているのではないか。現実世界の経済活動の規模は、学術界とは比較にならないほど巨大だ。Hitomi AIの開発チームには、個人投資家の実需に注目して開発を進めてもらいたい。
「人間に勝つ」という良好な評判を獲得
Hitomi AIの人工知能は、日本株を主な分析対象としているという。サービスがわりと新しいため、実際に利用した投資家の評判はあまり見当たらない。だが、「人間のアナリストや投資顧問よりも、AIのほうが期待できるかも」という声が出てもおかしくはない。その理由は、AIには「感情の入らない冷静な判断」が可能だからだ。

株ロボよりも料金が安い
また、単純比較はできないものの、Hitomi AIはいわゆる「株ロボ」よりも料金(固定費)が割安だと言えるのではないか。株ロボ(カブロボ)とは、複数のマーケットデータを取り込んだ後、株式の売買注文案を自動生成するコンピュータープログラムだ。各ロボットは組み込まれたプログラミングに従って分析を行い、ポートフォリオや売買銘柄・数量を決定する。
総合的な機能を備えた株式投資AI
日本には現在、以下のタイプの投資用AIが存在している。
- (1)ローソク足分析などのチャート解析を現代流にアレンジしたロジックを使うAI
- (2)短期的な株価の反発局面を収益機会とするAI
- (3)相場全体のトレンドに応じて株式のポートフォリオ組み入れ比率を制御するAI
- (4)ビッグデータに基づいて有望な銘柄を選定するAI
このうち、Hitomi AIは(1)(2)(3)の3つの機能を備えているようだ。いわば「総合的な株式AI」という位置づけだ。
他のAI投資との違い(比較)
Hitomi AIは、他のAI投資と何が違うのか、比較・検討してみたい。
「マネックスAI」の挫折から学ぶ
まず、マネックス証券の「マネックスAI」との比較を試みることとする。マネックスはかつて、米国ベンチャー企業と提携し、AI(人工知能)を活用して伝説的な投資家のポートフォリオを追跡するウェブサービス「アイビリオネア」を提供していた。2016年から2020年1月まで稼働した。
ポートフォリオのデータを取り込む
「アイビリオネア」は、各投資家が証券取引所法の大量保有報告書制度など、米国の決まりに基づいて定期的に公表している過去からの膨大なポートフォリオデータを自動的に取り込んで、投資家ごとの保有銘柄、保有株数、平均取得単価、損益率などが過去にさかのぼって見られるようになっていた。
評判が高まらず
マネックスでは、提携しているベンチャー企業が開発したアルゴリズムでデータを即時に取り込み、データの正確さやパフォーマンスについてAIを活用して分析を行っていた。このAIツールを活用すれば、偉大な投資家たちのポートフォリオの最新情報を得られる、という触れ込みだった。しかし、人気や評判が盛り上がらず、あっけなくサービス終了となった。
レイ・ダリオ
このAIは、例えばレイ・ダリオ氏の投資行動を読んだ。ダリオ氏はAIを活用する世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者であり、「リーマン・ショックを予告した男」として一躍脚光を浴びた。世界同時株安に見舞われた2008年、09年もプラスの投資収益を確保した。
失敗の教訓
Hitomi AIは、マネックスグループファイトとは一切関係がない。しかし、若い技術者が、世の中の先輩たちの研究成果を分析するのがHitomi AIの強みであるはずだ。マネックスの挫折・失敗の教訓からも、多くを学ぼうとしているようだ。実際に何が違うかと言うと、Hitomi AIは「余計な機能が省かれている」のだ。Hitomi AIは、単純なサービスだ。具体的な銘柄の名前を配信するのが主たる機能で、他の機能は省かれている。だから、ユーザーがリアクションや対処を迅速にしやすい。
リスクは常に大きい
かといって、Hitomi AIに教わった銘柄を何の検証もなく買うのは、愚の骨頂だということは言うまでもない。自分で銘柄や市況について詳しく調べたうえで、判断すべきだ。あくまで投資は自己責任である。大きな損失を出したとき、補填してくれる人はいない。リスクは常に大きいのだ。

【商品検証】銘柄抽出情報サービスの初回特別キャンペーン
私が最初に取材した段階では、Hitomi AIは初回特別キャンペーンを行っていた。直近の状況は調べていないので、読者のみなさんがご自身で確認して欲しい。AIが抽出した銘柄を、少しだけ教えるという限定サービスだった。「スタートプラン」という名前がついていた。AIが、高騰を間近に控えた銘柄の発掘・選定を目指している、とのことだった。
目標株価「1.2~2倍」
このキャンペーンは、目標の株価上昇率を「1.2倍~2.0倍」に設定していた。情報の提供回数は計4回。 1回につき2つの銘柄が提案するという。合計8銘柄。 さらに「特別期間」に該当するときは、計8回に増えるときがあるのだという。 つまり、この場合は銘柄数が「16」となる、という意味であろう。
料金は20万円としているが、こちらも「特別期間中のさらに特別期間」というものが存在する。この期間に該当すれば料金は6万円まで下がるようだ。つまり3分の1以下になる。
項目 | 内容 |
---|---|
株価ターゲット | 1.2倍~2.0倍 |
情報の提供回数 |
計4回
※特別キャンペーン中で、さらに「特別期間」に該当するときは、計8回に増えるときがある。つまり、この場合は銘柄数が16となる。 |
銘柄数 | 1回分につき2銘柄 |
料金 | 6万円(通常20万円) |
運営会社NOAHとは
所在地
Hitomi AIを運営する株式会社NOAH(ノア)は、2023年9月に本社を移転した。商業登記簿によると、「東京都港区南青山二丁目2番15号ウィン青山1302」から「東京都港区南青山三丁目5番2号 南青山第一韮澤(にらさわ)ビル3階」に変わっている。ただし、顧客情報や企業の技術的な機密情報などを守るため、実働部隊で別の場所で業務を行っている可能性もある。その理由は、先端のAIテクノロジーを海外の産業スパイ等に盗まれないようにするなど、セキュリティ上の事情があるからだ。AI企業では、開発拠点やデーターセンターの場所を秘密にするところが増えている。中国への対策も重要だ。
川端陸斗社長
また、NOAHの社長は2024年3月22日付で、日原彬氏から川端陸斗氏に交代した。新しい経営体制下で、AI開発がさらに進むことを期待したい。
項目 | 内容 |
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設立 | 2013年10月7日 |
資本金 | 300万円 |
社長(代表取締役) | 川端陸斗 |
業務内容 |
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