違いその1:「手数料」か「ソフト利用料」か
ロボアドは年率税込1.1%くらいの手数料が発生します。預けている総資産に対する1%です。
一方、AI銘柄抽出ソフトの場合、発生する費用は、ソフト代です。運用手数料はかかりません。
違いその2:「ETF」か「個別銘柄」か
ロボアドは、ETF(上場投資信託)が中心です。運用方式は日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数に連動させます。パッシブ運用です。
短期で多くのリターンを求めるというよりは、最適な分散投資で高い貯蓄性を提供する投資初心者向けの運用サービスというイメージです。
これに対して、STOCK SIEVEに代表されるAI銘柄抽出ソフトは、個別銘柄を買います。ソフトが、銘柄をいくつかピックアップします。その情報に基づいて、投資家が自分自身で、買うか買わないか。そして、いつ買うのか、を判断します。株価指数を上回る成果を狙うアクティブ運用となります。
違いその3:歴史
ロボアドの場合
ノーベル経済学者の理論
多くのロボアドには、米国の経済学者ハリー・マーコビッツ氏が唱えた「現代ポートフォリオ理論」が用いられました。
これは1銘柄に集中投資するのは損失リスクが高い、というものです。複数の銘柄に加え、債券や不動産など異なる金融商品に分散投資した方が、もうかる期待値が同じであれば損失のリスクが下がることを理論化しました。
最適な資産配分を実現するための基礎的な考え方となりました。マーコビッツ氏はこの理論で1990年ノーベル経済学賞を受賞しました。
リーマンショック後のアメリカで普及
ロボアドはまずアメリカで普及しました。きっかけとなったのは2008年のリーマン・ショックでした。
リスクが高いアクティブ運用を避け、安定性を求めるパッシブ運用への支持が高まりました。そのタイミングで、AIを駆使した運用サービスを提供するベンチャー企業が急増しました。
日本では「ウェルスナビ」がけん引役に
日本でロボアドが本格的に普及し始めたのは2016年ごろでした。
2016年2月に資産運用サービスを手掛ける「お金のデザイン」(東京)がTHEO(テオ)という名称でロボアドを活用したサービスを開始しました。2016年7月には「ウェルスナビ」が始まりました。
2016年9月には「マネックス・セゾン・バンガード投資顧問」(現マネックス・アセットマネジメント、東京)が同様のサービスをスタートしました。
このうち、運用実績や使い勝手の良さなどが評価されたウェルスナビが大きな伸びを見せました。2020年(令和2年)に東証マザーズに株式を上場しました。
AI銘柄抽出ソフトの場合
コンピューターの自動売買システム
AI銘柄抽出ソフトは、ヘッジファンドや機関投資家の間で普及しました。
コンピュータのシステムが、特定の論理やルールに従って自動的に注文する取引です。「アルゴリズム取引」とも呼ばれました。
基本的なシステムは、以下の機能を備えていました。
- 利用アルゴリズム(売買論理)の種類を選択
- 各種パラメーター(取引条件)を設定
- 大口注文を複数の小口注文に細分化し、自らの注文で株価が大きく変動するマーケット・インパクトを抑制しながら売買を実行
さらに、膨大な情報分析を短時間で処理することが可能となりました。チャート分析や業績などに基づいて、割安株を探し出すことができるようになりました。
多数の数学者やコンピューター科学者が参加しました。高価だから、個人には手が出ませんでした。
個人に開放
そんな取引システムが、個人にも提供されるようになりました。技術の進歩によって、安く作れるようになったのです。
その業者の先駆的な存在となったのが、AI Refereeです。「エリア20」という会社がサービス化しました。2018年に設立されたシステム開発の会社です。